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――およそ、1年前。
「そんな! いきなり……!」
「これは決定事項だ」
目の前のこの男は常に険しい表情を崩さないまま、静かに言葉を遮った。
すでに決まったことならば従うしかない。
私は見えないように両手を握り締め、きつく結んだ唇を緩めて「分かりました」と答える。
紹介が遅れたが、私の名前は新田 健(にった たける)。
警察庁公安の、特別捜査課に位置している。
ついさっき私に与えられた命令は、以下のとおり。
ある製薬会社が裏で非合法な薬品を製造している。その真否を探る為、そこへ潜入してこいというものだった。
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