第1章

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「いただきます。」 焼き魚に卵焼きに納豆。そして、白米に味噌汁のこれぞ日本の朝食が目の前にある。 「お口に合うかどうかわからないんだけれど」 少し頬を染め恥ずかしながら呟く彼女。 「すごい美味しいよ!」 口に物を入れたまま話したら母さんに叱られしまうかもしれないけど、飲み込むのも勿体無いくらい彼女の作ったご飯はうまかった。 そんな俺を見て、彼女は微笑みながら「良かったー。ねぇお味噌汁も飲んでみて。」と言った。 「俺は味噌汁にはうるさいんだぞー!」なんて冗談を言いながらスタンダードなワカメと豆腐の熱々の味噌汁に口をつける。 「どお?ダシが効いていればいいけど」不安そうに彼女が覗き込む。 「うわっ。美味しい。ダシのいい香りもするね!俺の母さんの作った味噌汁の味がするよ!」 若干引かれるかなと思いながらも久々に感じるお袋の味に感動すら覚える。 ずっと父子家庭で育った俺に母さんができたのは高二の秋だった。親父は思春期の俺に気を使い、再婚の事をなかなか言い出せずにいたみたいだ。 親父の苦労を知っていたから反対なんてするはずなかっのに。そんな三人が家族になって初めての朝食で母さんが作ってくれた朝食で出された味噌汁が美味しくて。親父の味噌とお湯だけ味噌汁に慣れていた俺は衝撃を受けたんだ。 そんな昔の事を彼女に話していたら突然箸を置き彼女が、話し始めた。 「私の父はいつもお酒ばかり飲んでいて夜になると母と私を殴るような人だったわ。そんな生活が何年も続き、父が夜も昼も関係なく殴る様になったある日学校から帰ったら母はどこにも居なかったわ。母は私を置いて逃げたの。あのバケモノが居る家に。」 彼女が唇をグッと強く噛んだ。 彼女の突然の告白に俺は何も言えずにただ聞くことしかできずにいる。 「私は父の目を盗んで母を探し続けたわ。いつか迎えに来てくれるんじゃないかと期待もしながら。けど、私が大人になっても母はこなかったの。そうよね。来られなかったの。だって新しい家族がいたから。楽しそうに、幸せそうにしていたわ。私が見た地獄なんてそこにはなかったわ。ねぇ。あなたが飲んだお味噌汁。母が私に教えてくれたレシピで作ったのよ。久々に2人で作れたのよ。美味しかった?ちゃんとダシ出てた?母で作ったお味噌汁。」
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