聖邪の行進

御崎レイ

それでは、次のニュースです。

本日未明、南古橋の現場で
作業員五十二名が行方不明となりました。
東京都百代田区。

目撃者は、依然としてみつかっておらず、
現場にはおびただしい量の血と人の手足が多数残されており、
引き続き行方不明者の行方と原因の追究を急いでおります。

「最近、大量殺人といいますか、
　恐ろしい　事件が多発していますね。
　半年前から全国で、
　次々に行方不明になっている
　十代から二十代の女性もまだ、
　誰一人として見つかっておりません。
　皆さん。
　くれぐれも、お気を付けください」

「世界で、
　一体何が起こっているのでしょうか？」

「私は、
　宇宙人の仕業かと思っておりますの」
気取った美人風の専門化が眼鏡を上げる。

「宇宙人なんているのでしょうか？」

うんざりする。
朝から繰り返されるコメンテイター達の的外れな空想議論。

「はぁ・・・」

赤く光るグロスが塗られた薄い唇から、
大きなため息が漏れる。
透き通るような白い肌。
朝から動き回ったおかげで、
血行の良くなった頬は、
健康的に赤みがかっている。

朝から大きな切れ長の目で
テレビ画面を睨みつける。
ピリピリと苛立っているのは、
主人公である、御崎レイ。

「ごちそうさま…」

昨日、一時間半も並んで買った
『ソワレのクロワッサン』を目の前に…

朝からこの不愉快な事件のおかげで一気に食欲がなくなってしまった。
まさか、ここまで犠牲者を出してしまったなんて。

朝から全てのチャンネルを
ジャックしているかのように
報道しているこの事件は、
赤い目をした人を喰らう鬼の仕業。

奴等は普段、
普通の人間に見えないように
姿を消している。
最近、人が消える事件のほとんどは
鬼絡み。
鬼が人を喰っている
という事を知るのは、
私を含め、世界で一万人ほどだ。