篠突く雨ならば

一

それに帰り際には、「また寄らせてもらうよ」と言っていたような気がする。

中折れ帽を頭にのせながら、まるで捨て台詞のようにつぶやいて去る背中は、映画の一場面のようだった。

言動が芝居がかっていて、変なお客だけれど、その確固たる自信のようなものは羨ましいかもしれない。

頭がぼうっとする。長湯をし過ぎたかな。

湯船から立ち上がりながら、明日の天気はどうだろう、と思う。

雨であれば来店するのだろうか。

やはりのぼせたらしく、軽い動悸がした。