白球

第1章 白球

　相手のサーブを前衛の少年が返球する。返球した瞬間、前衛の少年が後衛に、そして、後衛の少年が前衛のポジションにチェンジした「。

　対戦相手は多少動揺したのか、ボールの返球が甘くなり、前衛にとっては絶好のチャンスボールが飛んできた。後衛だった少年がスマッシュの体制をとる。対戦相手はそれに備えるが、それを見た少年は機転を利かせて体制を変えた。

　そう、トップ打ちだ。ボールが弾んだ時、そのボールの高さが一番高いところで打つ体制で、本来ならばボールの打ちやすい所に行きながらその体制をとる事が多い。

　しかし、後衛にいた今の少年は前衛にいる。今は下がるだけでその位置に入る事ができる。

　スマッシュの体制のまま下がる。相手はスマッシュを警戒している。少年はチャンスだと思った。ボールの打点に入ったその瞬間、トップ打ちの体制に変えて相手コートにボールを打ち込んだ。

　その突然の変化に相手は完全に冷静さを失い、見事に１点をとる事が出来た。

　そこからは完全に自分達のペースで試合が進んだ。相手は落ち着きを取り戻す事が出来ず、ボールを打ち返してもネットを超えない、越えたとしてもアウトを連発。後は完全に自分達にとってのチャンスボールが多かった。