第1章

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 仲のいいバイト仲間の徹にも相談をして3人で田所を呼び出すことにした。  俺と彩音だけよりもう一人男がいたほうが田所も下手に手を出してこないと思ったからだ。  バイトが終わってからこの部屋に集まり田所の携帯に彩音の携帯から俺の名前でメールした。  メールという証拠があること。  警察に届け出る気でいること。  そして俺と彩音が付き合っていること。  田所はすぐやって来た。てっきり土下座のひとつでもしてくるかと思ったが俺があまかった。  来るやいなや俺に向かって 「お前じゃこの子を幸せにできない」  と睨みつけてきた。  本当に頭のいかれた奴だ。  その後俺と徹が何を言っても聞く耳を持たず俺への文句を言い続けてきた。  そこまではまだ我慢できた。  しかし田所の標的が彩音に変わり口論の間ずっと泣いていた彩音に 「泣くな淫乱女。どうせこの後こいつに裸で慰めてもらうんだろ」  と罵声を浴びせた。  そこで俺の記憶は一時途絶えた。 「おい悠二、悠二」  徹の叫び声が聞こえ我に返った。   気がつくと田所の首に俺の手があった。  これが今日ここで起こった事だ。 「どうすんだよ悠二」  もう一度徹が聞いてきた。  彩音を見るとまだ震えている。 「自首してくるよ」  そうするしかない。俺が殺したんだ。二人は罪に問われないだろう。 「徹ごめんな。巻き込んじゃって」  徹は返事もせずうつむいている。 「彩音ごめんな。守るってこういう事じゃないよな」  目に涙が溜まっているのが自分でも分かる。これ以上話ていたら溢れでてしまいそうだ。  彩音に背を向ける。もう一生会えないかもしれない。 「この死体、埋めようよ」  彩音の声が背中にささった。 「何て言ったの」  徹が聞き返した。 「ばれない場所に埋めれば大丈夫だよ」  彩音はきっとパニックを起こしている。 「あのな彩音、」 「大丈夫。私、経験あるから」  え、  彩音が立ち上がった。   先ほどまでの体の震えは全く無くなっている。 「私、人埋めた事あるから大丈夫」        
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加