第1章

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 やってしまった。  こんな事になるはずじゃなかった。  今、俺の前には死体が転がっている。俺がやった。首を絞め殺してしまった。 「おい、悠二、ど、どうするんだよ」  隣で徹が声を震わし俺に尋ねてくる。 「ど、どうするって・・・・・・」  冷静な判断などできない。当たり前だ。口論の末もみ合いになりこいつを殺してしまったのだから。  彩音を見ると声も出さず床に座り込みただただ震えている。  すまん彩音、お前を守るはずがこんな事に。  事の発端は1時間前。  俺と徹と彩音は俺の部屋に集まり田所を待っていた。  田所は俺達3人がバイトしているピザ屋の店長。そして俺の彼女である彩音のストーカーだ。  彩音が言うには1ヶ月前に田所から告白をされたらしい。  彩音はその告白を断ったらしい。当たり前だ。田所には妻子があるし何より俺と付き合っている。その後お互い働きづらくならないように彩音はなるべく言葉を選んで丁重に断りをいれたつもりだったらしいがその日から田所のストーキングが始まった。  毎日のように愛の告白をショートメールで送ってきたり、住んでいるアパートから最寄のコンビニに買い物に行くとなぜかそのコンビニにいて家まで送ると言ってきかなかったりと執拗に迫ってきていたらしい。  優しい彩音はみんなに迷惑が掛からないようにと一人で解決策を考えていたがついに1週間前、干していた下着が盗まれた事でもう駄目だと思い俺にストーカーの被害を打ち明けた。  その時彩音は泣きながら謝ってきた。  迷惑を掛けてごめんねと。  告白をされた時、俺と付き合っている事は言っていないらしい。  俺を巻き込みたくなかったんだ。  彩音はそういう子なのだ。  俺は近くにいながら気付いてあげられなかった自分が心底情けなかった。謝るのは俺のほうなのに。  そして田所への憎悪がこみ上げてきた。  いい年して若い女相手に何をやってるんだ。しかも妻子がありながら。
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