春嵐

5/67
前へ
/118ページ
次へ
「じゃあ、二人でどこかに行かない?」 「えっ?......それって......」 「うん、デート!......」 弾んだ声で真希は言う。 「............」 だが、康太は次の言葉に迷う。 「......嫌なの?」 「......いや、嫌ではないけど......」 康太はまだ女の子と付き合ったことがなければ、勿論デートなんて一度もない。なのに、いきなりデートをするなど康太にとってはまだ昇れない大人の階段である。 「じゃあ、水族館か映画館。行き先は康太に選ばせてあげるから......」 相変わらずのペースで真希は話をどんどん進めていく。 まるで飼い犬のリードを引くように。 ーー拒否や逡巡する暇を与えず。 「......でも、その......」
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加