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「はあ……いつになったら……」
花火の光に自分の影が伸びる。
辺りが明るくなり、見上げる人達の歓声が届く。
何人の男を受け入れたって、ちっとも満足できない。
SEXを始めて暫くすると、頭の中がひどくクリアになり、『嫌だ、コイツじゃない』と拒絶の思いが強くなる。
何度繰り返しても、結局一緒だ。
「どこに行けば、会えるんだろ……」
イチャつくカップル達に舌打ちし、前を見た。
“ドクン”
心臓が鳴る。
10㍍ほど先で、着物姿の男がこちらを見て立っている。
髪が長く、サイドで軽くひとつに結わえられており、それが胸の辺りまである。
最後のクライマックスである柳花火が数発上がり、辺りは真昼の輝きをとりもどしたように明るくなった。
だがその男は、見上げている風でもなく、ただ俺を見ている。
「あっ……」
何かを発しようとした時、その男はゆっくり手招きした。
俺の足は吸い寄せられるように前へと動く。
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