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背中を這う舌が、まるで凶器で切り裂かれ生ぬるい血が伝っていくようだ。
「ねえ……あんた、名前は?あぁ…俺は……」
「遥だろ?知ってる……俺の名前は……さあな、名前なんてねえからな…」
『くくく……』と喉の奥を鳴らし、印を刻むように背中を吸う。
うしろのコイツから伝わる熱に、俺自身が焼かれそうだ。
「紅…丸……紅丸は?あんたの…名前」
俺は後ろを振り返り言った。
「へえ……かまわねえよ。悪くねえ。だけど、何でだ?」
「あんたが、赤鬼だから……」
ピタリと紅丸の動きが止まる。
「くくく……よくわかったな」
「手……昔、指さした手を思い出した」
俺は紅丸の方を向く。
「長い爪……金の腕輪。そして、赤い腕」
「ガキのくせに、手を気づいていやがったか……」
「今まで忘れてた。だけど、あの腕に俺は助けられた。この手に…俺は魅了された」
紅丸の愛おしい腕を抱き締め、頬擦りする。
「それで……あいつを殺したの?」
「くくく……とんでもねえガキだな。それも気づいていやがったか」
俺は紅丸の腕に口づけし、その長い指を口へと含んだ。
「あいつは……」
「ああ、あの野郎は、ガキだった遥を殺して、たんまり死姦しようとしたイカれた野郎だった。それまでにも何人か、ガキを狙った猥褻事件があっただろ?あいつが犯人だ」
「やっぱりね……」
「生きたガキより、生きてないガキの方が良いって男だった。まあ俺は、自分が目をつけた人間を殺されそうになったから、結果として助けたまでだ」
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