◆・うしろの……・◆

8/9
前へ
/10ページ
次へ
あの時の叫び声は、あの男の断末魔…… 「あいつのさ……少しは美味しいとこ、食べた?」 「タバコと妙な薬臭くて、食いたいとこなんてなかったな」 紅丸の爪が伸び、俺の服を切り裂いた。 「じゃあさ、少なくとも俺にはある?紅丸が食べたいとこ……」 俺を見つめ、紅丸は首をかしげる。 「何故死にたがる?」 「紅丸が言ったんだよ。だから俺は、そうなることを望んでたんだ。忘れてしまっていてもね」 「ほう……覚えていたか?」 俺はコクリと頷く。 「『……ああ……いつかな。きっとおまえを……喰らいに行くからな』だったよね。俺、クスリだってやってないし、タバコも吸ってない。ヤル時はちゃんとゴムだって着けてたよ」 切り刻まれた衣服の残りを剥ぎ取り、俺は靴以外何も身に付けていない姿になった。 「どう?喰らいたくない?」 こんなだってのに、俺の身体は内からの悦びに溢れているらしく、見られているだけでイケそうなほどだ。 「ああ……美味そうだな」 紅丸は舌舐めずりをし、その長い爪を俺の胸へと立てる。 「胸から腹へ切り裂いて、血の滴った心臓にレバーに……くすくす……さあ…俺をたっぷり……召し上がれ……」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加