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「愚か者……俺が気づかぬと思ったか?」
紅丸は俺の肩を掴み引き寄せた。
「いつでも喰らうてやろう……遥の命が尽きる時な…」
「紅丸……」
「確率が低くとも、病を治せ。俺が付いててやる」
俺の身体が震える。
「気づい……てたんだ」
「精一杯生きろ……そんな遥を俺は気に入った」
涙がボロボロと溢れる。
「俺には病の元を絶つことはできない。だが、遥の命が尽きる時まで、一緒にいてやる」
「進めば、食べるところが無くなるよ。今なら……」
「鬼が喰らうのは、身体だけではない。遥は鬼の俺に、普通の人間として送るはずだった時間を喰らわれるんだ。俺からは逃げられないからな……」
「鬼のくせに……バカだ…」
顔を覆う俺の頭に大きな手がのせられる。
「鬼との時間は生き地獄だ。覚悟しろ」
「俺にとって、天国以上の地獄だよ」
そうだ、生きてやる。
あとどれだけかわからないけど、
「俺の時間、しっかり喰らえよ」
俺は紅丸の胸へともたれかかった。
ああ、あの時と一緒だ……
生きていける気がする。
□おわりんご□
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