第1章

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「もう半身ですよ。失えば生きてゆけません」  はっきりと宝来が告げる。スズキが、楽しそうに笑っていた。 「天然体にそう告げる実験体は、多いのではないのかな?」 「それでも、天然体に愛していると言わせると、至福ですよ」  顔は笑っているが、火花が散っているようだった。  政宗は、時宗を連れ、ユカラの空港にある、設備へと案内した。全ての顔を把握しているソフトに、病気を感知するゲート。問題があれば、即、隔離される。 「すごいね、王ランドにも導入したいものがあるよ」  それは、最新の掃除ロボットであった。 「…これ?」  ボール型で、転がりながら清掃している。上も壁も、飛び上がり清掃する。 「…これ前に、時宗が赤ん坊の時に部屋で使用していたもののアレンジだよ」  時宗は、だから、何だかなつかしいのかと、ボールを手に取り楽しそうだった。  時宗が歩きだし、蹴り飛ばすので壊れたのだ。政宗も、灌漑深いものがある。 「じゃあ、造ってもいいか?父ちゃん」  設計図などなくても、時宗は作るだろう。 「いいよ」  でも、他にも何かいいものは無いのか?見回すと、宝来に加わり、茶屋町までもがスズキと睨み合っていた。 「茶屋町」  茶屋町は、まだスズキを睨んでいる。ゲートが開き、搭乗手続きが始まっていた。 「見送りなんて無いと思っていたので、嬉しいよ」  スズキは、テロを容認しているわけではなく、正義も信じていなかった。 「最後のクイズは、君に回答を貰いだい」  スズキは、政宗を見ていた。 「…どうぞ」  スズキは、笑顔になっていた。 「ミラレスの研究は、最後に子供の脳に全て記録され、逃されたという。その子供は、誰だと思う?」  そういう噂は聞いた事があるが、そんな子供には会ったことは無かった。全ての人が、国宝級の天然体の誰かだろうと、推測していた。しかし、政宗は、それは違うと感じていた。 「多分、まだ覚醒者はいません。実験体なのか天然体なのか不明ですが、受精卵が育ってゆく過程で、条件が揃った場合に、発動するように組んであると思われます」  詩織の脳、政宗の天然体の感から得たが、それは確信であった。自分達の遺伝子には、未知がある。 「…そうか」  スズキは納得したような、疑っているような微妙な表情をしていた。 「それでは、さよなら」  地球には、政宗は行く事はできない。規制がとても厳しいのだ。 「ありがとうございました」
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