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Naked Moon 白夜
『Midnight sun』
第一章 現在と過去
惑星MHZ28(通称オウランド)各種企業の研究所が多く、又、研究所を擁する大学や、その付属する高校が多く存在する。主な産業は、地下鉱物の採掘と売買。しかし、住人の半分以上が、何らかの研究所の関係者となっていた。
「なあ、父ちゃん。どうして、俺の家はこんなに外れにあるのだ?」
可愛い顔をした少年が、オープンカーというよりも、バギーの後ろに乗っていた。ごついゴーグルに、銀色のヘルメットが似合っている。
「…パパとか言って欲しいかな…」
バギーを運転しているのは、成田 政宗(なりた まさむね)二十六歳、後ろの少年の父親だった。少年の名前は、成田 時宗(なりた ときむね)八歳。
「中央ビルのユカラから、離れる程、地位が低いと、みんなが言うのだ…」
政宗と時宗が住んでいる家は、そのユカラから出て、周囲を取り巻く住宅地を抜け、建造物が無くなり一軒家になった場所にある。これ以上、離れて住んでいる者はいないだろう。
「ごめんなさいね、俺も、茶屋町も、元軍人さんだろう。ユカラが、嫌がったのよ」
道は次第に狭くなり、舗装すら無くなっていた。政宗は、岩の道なのか?オフロードなのか?を楽しそうに走っていた。自宅に帰るのに、道はちゃんとあるのだが、政宗はわざとアウトドアな道を選んで走っていた。
オウランドのオレンジの大地は不毛で、植物は生えていない。土に含まれる成分が、植物の生育に適していなかったのだ。
政宗は説明しないが、本当は、ユカラに住もうとしたのだ。しかも、エリートしか住めないという上層部に住居を与えられていたのだ。引っ越し早々、政宗の留守中にテロに遭った。政宗の妻の詩織と、一緒に軍を退役してきた茶屋町 一樹(ちゃやまち かずき)の妻の紗知(さち)がテロに巻き込まれ重傷を負った。
このテロのせいで、ユカラに住む事を止めたのだ。
砂漠に浮かぶ、緑のドーム。ガラスのような容器に入った緑のオアシスが、政宗の住居になる。砂漠から見るドームが、政宗のお気に入りだった。オレンジの大地に、緑のドームはまるでおもちゃの森であった。
表面を覆うのは、ガラスではないが、この壁が無ければ、植物は育たない。ドームの中の地面は実験用で、この星の土を改良したものだった。
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