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魔法といって、思い浮かぶのは火の玉を出したり、飛んだり、瞬間移動したりすることだ。
もしも、リーブエスタの世界の魔法がオレのイメージ通りなら、最弱の魔法使いにすら負ける自信がある。
「その点は、安心してくれていい。君には私の力の一部を授けよう。」
「お前の力の一部?」
「そうだ。意志の力を物理的な力に変換する力……君にはピッタリだと思うのだが。」
「どういう意味だ?」
「先にも言ったが、君は、人間という個体の中では精神エネルギーが飛び抜けて高い。君の意志力と私の『神意力』が合わさればどうなるか。とても興味がある。」
また、何とも身勝手な理由だな。
だが、こんな空間に独りでいれば、さぞ退屈だろう。
孤独感を拭うために、人間で遊ぶのも仕方ないのかもしれない。
「何であれ、そんな力を貰えるなら有難い限りだ。生前は何の力もなかったから、救える人間も少なかったが、その力があればより多くの人を助けることができるからな。」
「私もそれを願おう。その方が楽しいからね。」
神がクックッと喉を鳴らす。
この男の笑い方には、未だ腹立たしさを拭えないが、思ったより悪い奴ではないのかもしれない。
「そうかよ。で、転生ってことは、オレは生まれ変わるってことだよな?」
それは、赤ん坊から、ということになるんだろうか。
「いや、君は君のままだ。…だが、年齢は十八歳に戻ってもらうよ。肉体的に、今の年齢では下り坂だからな。」
オレの思考を読み取ったのか、神はそう言った。
「十八? それだと、行動に色々と制限がかかるんじゃないか?」
「リーブエスタでは、十八なら立派な成人だ。何も問題はない。」
それなら、いいか。若返る分には何も問題ないものな。
「では、そろそろ時間だ。最後になるが、私の名はカーディナルだ。」
カーディナル……。枢機卿? 変な名前だな。神の名前なんて、そんなものなのか。
未だ流れるリーブエスタのプロモーションムービーを見ながら、オレは席を立った。
「神意力は、リーブエスタに行けば使えるようにしてある。これで君は、神意の代行者だ。さしずめ、プロヴィデンサーとでも名付けようか。」
「随分痛々しい名前だな。」
「クックックッ。ではな、プロヴィデンサー。」
神が、指をパチンと鳴らす。その乾いた音を聞きながら、オレの意識は暗転した。
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