プロローグ

2/3
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
きっかけは、些細なことだった。 よくあるだろう? 小学校や親の教育で行われている奉仕の精神や自己犠牲の精神ってやつだ。 友達のために、自分の時間を削ってでも何かを手伝う。 それがさも、崇高な行為であるように大げさに褒め称える。 ーーただ、自分が自分を押し殺して人のために何かをし、それで褒められたことが……妙に嬉しかったのを子供心に覚えている。 さすがに大人になれば、それが大人たちにとって都合のいい誘導だったことに誰でも気づく。 大人になれば、皆しなくなる。 道路で誰か倒れていても、見向きもしない。 イジメの現場に遭遇しても、見ぬふりをする。 ゴミが落ちていても、誰かが拾うだろうと遠ざける。 他人が困っていても関心を持たない。 おかしいだろう? だって、小さい頃には差異はあれど、皆普通にしていたのに。 どうして成長とともに、そういった道徳心を捨ててしまうんだ? 自己犠牲がヒトとして理想的な生き方だと、本当は正しい行為だと分かっているはずなのに。 ーーそう思うオレは、きっと…… “異常” なんだろう。 そんな異常が、普通の人間の中で生活すれば、自然と孤立していくものだ。 助けた人間も、手伝った人間も、救った人間も、皆離れていった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!