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空気に匂いがある。
それが、オレが最初に思ったことだった。
次いで、死んだはずのオレに意識があることを疑問に感じた。
ーーまさか、幽霊にでもなったのか?
慌てて目を開けて確認する。
別に体が透けているわけでもない。体にも触れられる。
幽霊という線は薄そうだ。
とすると、ここは天国か地獄か、そのどちらかということだろうか。
辺りを見回す。
オレが寝転んでいたのは、豪奢な天蓋付きのベッド。無駄にキングサイズくらいある。
部屋には、他に何もなく、精巧な金の刺繍が施されたいかにも高そうなレッドカーペットが敷かれている。
改めてオレ自身の体を見てみると、着ている服は、囚人服のままだ。
流石に横縞の服ではないが、それでもこの豪奢な部屋に、こんな麻のボロ切れを着た人間がいるのはあまりにもシュールだ。
ここにいても仕方がない、と判断し、部屋を出ると、だだっ広くやたらと長い廊下が続いていた。
仕方なく廊下を歩いていく。
靴など履いているわけもなく、ペタペタと素足の足音が虚しく響く。
そうして歩いていくと、目の前に一際大きな両開きのドアが現れた。
いかにもなドアだな、と思いつつもそっと開けて入ってみる。
すると、中には長いテーブルと無駄に多い椅子が並べられていた。
そして、長いテーブルの先には誰かは知らないが、一人の男が座っていた。金色の髪を後ろに靡かせ、琥珀色の瞳をもつ、三十代半ばの男だ。
その男が口を開く。
「ようやくお目覚めかな? ふむ、地球時間で丸二日間といったところか。まぁ、座るといい。」
そう言われ、オレは無言で椅子に座った。丁度男とは対面する形だ。
といっても、距離は離れているが。
「さて、食事でもするかね?」
男は指を鳴らす。すると、何もなかったテーブルに、瞬時に料理が現れた。
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