第1話

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空気に匂いがある。 それが、オレが最初に思ったことだった。 次いで、死んだはずのオレに意識があることを疑問に感じた。 ーーまさか、幽霊にでもなったのか? 慌てて目を開けて確認する。 別に体が透けているわけでもない。体にも触れられる。 幽霊という線は薄そうだ。 とすると、ここは天国か地獄か、そのどちらかということだろうか。 辺りを見回す。 オレが寝転んでいたのは、豪奢な天蓋付きのベッド。無駄にキングサイズくらいある。 部屋には、他に何もなく、精巧な金の刺繍が施されたいかにも高そうなレッドカーペットが敷かれている。 改めてオレ自身の体を見てみると、着ている服は、囚人服のままだ。 流石に横縞の服ではないが、それでもこの豪奢な部屋に、こんな麻のボロ切れを着た人間がいるのはあまりにもシュールだ。 ここにいても仕方がない、と判断し、部屋を出ると、だだっ広くやたらと長い廊下が続いていた。 仕方なく廊下を歩いていく。 靴など履いているわけもなく、ペタペタと素足の足音が虚しく響く。 そうして歩いていくと、目の前に一際大きな両開きのドアが現れた。 いかにもなドアだな、と思いつつもそっと開けて入ってみる。 すると、中には長いテーブルと無駄に多い椅子が並べられていた。 そして、長いテーブルの先には誰かは知らないが、一人の男が座っていた。金色の髪を後ろに靡かせ、琥珀色の瞳をもつ、三十代半ばの男だ。 その男が口を開く。 「ようやくお目覚めかな? ふむ、地球時間で丸二日間といったところか。まぁ、座るといい。」 そう言われ、オレは無言で椅子に座った。丁度男とは対面する形だ。 といっても、距離は離れているが。 「さて、食事でもするかね?」 男は指を鳴らす。すると、何もなかったテーブルに、瞬時に料理が現れた。
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