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「何とも身勝手な理由だな。そんな理由で、オレは死後の安息をお前に邪魔された、と?」
明らかに態度を不機嫌にし、腕を組んだまま問う。男は、愉しそうな表情を崩さぬまま、再び指を鳴らした。
目の前に、今度はカップが現れる。中には紅茶と思われる液体が注がれていた。
「そうだとも。君は私の身勝手でここに連れてこられた、ということだよ。だが、誰しも自分のパラダイムに従って行動するのは、人間も一緒だろう?」
男は言いながら、紅茶を飲むようにジェスチャーで促してくる。
オレはそれを、無言で首を振って拒否する。
「……お前、一体何者だ? 話ぶりからすると、人間じゃないって聞こえるけど。」
言いながら、時空の狭間なる空間にいて、指を鳴らしただけで料理や紅茶を出せる男が人間であるはずはないと、薄々感じてはいた。
ある種の達観めいた言動も、おおよそ男の年齢で滲み出るものではない。
男は勿体つけたように、息を吸い、
「…私は、君たちからすれば『神』と呼ばれる存在だよ。」
と、宣った。
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