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男の神発言に、目を丸くする一方で心のどこかでは納得している自分がいた。
「神、か。随分勝手な神がいたもんだな。」
「神とはそういう存在だと思うがね。全知全能である、などとは人間が創り出した虚像に他ならない。もし神が全知全能であるなら、あのような不完全な世界が出来上がるわけがないからね。」
確かに、とオレは思った。あの世界は不完全だった。
多くの人間が身勝手に生き、不平等や差別、飢餓、戦争が絶えない。
この神とかいう男の言う通り、創った奴が身勝手で自己中心的でなければ、あのような世界は生まれない。
「私の正体が分かったところで、一つ提案があるのだがーー」
神が口を開く。ひどい悪寒を背筋に感じ、オレは「断る。」と口を挟んだ。
「中々に無礼だね。人の話は最後まで聞く、と学校で習わなかったかな。」
「お前みたいな怪しい自称神の話なんて、聞いてたまるか。大体なーー」
そこで、オレは鯉のように口をパクパクさせた。喉を押さえる。
ーーおかしい。
いくら口を動かしても、声が出せない。
オレに何かしたであろう、自称神を睨みつける。
すると、
「これで、静かに話を聞いてもらえるな。」
と、ぬかした。
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