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抗議をしようにも、声は出せず、席を立とうにも、オレの体は見えない力で椅子に固定されていた。
「提案というのはね。別の世界に転生しないか、というものなのだが、どうかね?」
転生……?
それはつまり、生き返るということか?
「悪い話ではないだろう? 君はまだ多くの人を助けたい。私は君を観察したい。お互いの利害は一致しているとは思うのだがね。」
確かに、オレは死んだことには後悔していない。自分で選んだ結果だ。
だが、その一方で、まだまだ多くの人のためになりたいという思いが残っているのも事実だ。
この神が言うように、オレとこいつの利害は一致している。
オレは、首を縦に動かした。
すると、神は嫌らしくニマァと微笑み、指を鳴らした。
「交渉成立というわけだな。」
「何が交渉だ。半分は脅しだったろ。拘束して発言不能での交渉なんて、聞いたことないぞ。」
睨みながら言うと、神は首をすくめた。
自分の行為が間違っているなどとは、露ほども思っていないらしい。流石は、自称自分勝手な神だけはある。
「あまり細かいことを言うものではないな。大体、君が話を素直に聞かないからいけないのだ。それにーー」
神は、わざとらしくワンテンポ置き、
「君は必ず選ぶと確信していた。もう一度、信念を貫くためにな。だから、本当に手荒な真似はしていないだろう?」
そう言うと、神は立ち上がった。
その顔には、全てを見透かしたようなスカした笑顔が張り付いている。
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