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時々喧嘩したりするけど、俺の事を大切にしてくれている家族がいて、気の合う友達もいて、成績は問題ないとは言えないけど、赤点ばかりじゃないし、今の所、特に何の悩みも無く、俺、奏恵亮(かなためぐる)は高校生活二年目の冬迎えた。
「ふ……ぁああ……」
登校途中、朝っぱらから情けない欠伸をしているのは、この俺。
別に夜更かしをしたわけでは無い。ただ眠いだけだ。もう少し温かい布団の中で、眠りたかった……なんて欲が出て、半分眠ったようにふらふら歩くと、後ろからリンリンと自転車のベルが鳴ってくる。
自転車は風があたって寒いんだろうな……。俺の横を通り過ぎていく、皆、顔をマフラーに埋めながら、自転車をこいでいる。俺が今の様に、眠いまま自転車に乗ったら、事故を起こしそうだが俺は、自転車通学ではなく徒歩の為、こんなに眠くても事故を起こす心配は無い。家が近いと自転車通学禁止らしい。遅刻しそうになったら走らなきゃいけないなんて地獄だ。
「ひゃぁあああどいてどいて!」
真っすぐ歩いていたつもりだったが、邪魔だったのだろうか。甲高い声が真後ろから聞こえてきた。しかし、叫び声とか……。普通はベルを鳴らすだろ……そんな事を思って後ろを振り向くと、自転車が俺に向かって突っ込んでくるのが見えた。
「うわああああああああああ!」
叫んだ時には……というか後ろを振り向いた時点で手遅れだったんだろうな。ガシャンと金属がぶつかるような音を立てて俺は飛んだ。……正確には飛ばされた。
しかし、不幸中の幸いなのかどうか知らないが、雪が積もっていたおかげで僕は無傷で済んだ。冷たくて低温火傷しそうだが、物理的には無傷だ。
「大丈夫?ごめんね痛かったよねごめんね」
俺と突き飛ばした張本人の緜梨比嘉華(わたなしひかげ)が声を掛けてくる。
「頭に雪乗っけて何が大丈夫だよ……」
「あ、ごめんね……ありがと」
「朝っぱらから熱いですね。お二人さん。一人の俺に見せつけですか?」
上を見上げると眉間にしわを寄せた深海謙斗(ふかみけんと)が俺等二人を見降ろしていた。それはそうと、熱いというのは間違いで、こいつ、比嘉華と俺は付き合ってるわけじゃない。……今は。
「私、恵ちゃんと付き合ってるわけじゃないよ?」
「……恵ちゃん……!」
さらっと比嘉華が俺の事を、恵ちゃんと言ったのが可笑しかったらしく、謙斗は腹を抱えて笑い始めた。
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