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比嘉華が俺の事を、恵ちゃんと呼ぶようになったのは、去年同じクラスになった時からだ。
「怖い顔してるよ、せっかく可愛い名前なのに……恵ちゃん。恵亮だから恵ちゃんね! 今日からそう呼ぶからね!」
などと入学初日にいきなり言われ、勝手にしろと言ったら、本当にその日から比嘉華は、俺の事を恵ちゃんと呼ぶようになった。……二年になったら直ると思ったのに。未だにそう呼ぶか比嘉華……。
「あ、自転車置いてくるね、ごめんね、じゃあね」
そう言って比嘉華は、俺等に背を向けて去っていった。それと同時に、謙斗が俺の肩にポンと手を乗せて来た。謙斗の方を見ると、笑いをこらえて少しいらつく顔をしていた。……何だこいつ。
「……寒い」
そりゃそうだ。ここは外の渡り廊下なのだから。それでも、冷たいジュースを飲みながら言う事ではないと思うが、俺に対しての当てつけなのだろうか……。
どうしてこんな寒い所に居るのかと言うと、唯単に人通りが少ないからだ。……まぁ、こんな寒い日に外に出るという事を考える奴なんて、俺以外に居る訳がなく、現時点、俺と謙斗以外ここには誰も居ない。
「こんな所に呼び出して、何ですか恵ちゃん」
「……おい、その呼び方止めろ」
「やだね、面白いもん」
ひひひと謙斗はまた笑いだした。
……こいつの笑い方は少し変だ。
「で、何? もしかして俺に告白? やだねー、俺最近モテる」
「馬鹿、そんなわけあるか」
「だよね、あのドジっ子じゃなくて俺って……ねぇ?」
「……ん?」
あれ、俺まだ比嘉華の事を、好きだなんて誰にも言ってないけど……。え? そういえばこいつ、朝っぱらから熱いだとか何か言ってたような気がする……。
「……何でそこで比嘉華が出てくるんだよ」
「ん? 俺は別に、比嘉華ちゃんとは一言も言ってない」
クスと馬鹿にしたように笑う。
「……っな……んだよもぉお!」
騙しやがったなこいつ!
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