9人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
白い世界。俺はそこにいた。
なにもない、何も見えない、何も居ない。
そんな世界で確かに俺はいた。
「そうか、死んだか。」
ポツリ、と口に出した言葉。いや、口や手、足。身体もないのだから言葉には出していない。
心のなかで思っただけのその一言が、俺の胸の中を晴れやかにする。
「そうだね、君は死んだよ。」
俺の言葉ではない、誰かの声が俺に掛けられた。
「そう、君の最後、実に素晴らしかった。私は年甲斐もなく感動したよ。」
賞賛の言葉ではない。半分嘲るような声が、俺に響いた。
「君の思いは、届かなかったよ。【偽りの英雄】さん。」
チクリ、と胸を突くその言葉。解っていたはずなのに、心はどうしても痛む。
「だけどね、私は感動したものにはその対価を支払うべきだと思うんだ。」
その"声"が、ただ一人ボヤくように続ける。あぁ、もういい。楽にしてくれと、俺が思う中、その声は普段の俺ならば信じられないような言葉を発する。
その言葉が、俺に再び生気を宿らせるには十二分であった。
「君にもう一度チャンスをあげよう。復讐のチャンスだ。」
ドクン、と無い筈の心臓が跳ねた。
最初のコメントを投稿しよう!