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肩までのまっすぐな髪は緩めのウエーブ、黒のリボン仕様のバレッタで留めると茶髪の髪が襟元で遊ぶ。
制服の上にクリーム色のコートに黒のブーツ。
鍵をかけていると後ろから誰か立っている様子に振り向きたくなかった。
『だ…誰?』
『あたし』
声でわかる、朝から悪魔と対面なんて!
《おはよう》とか言いたくないし、イブ以来だから何て声をかけて良いかわかんないんだもの!
イブ以来ーーー。
そう思っているがステキスーツ男子にときめいた舞は、マンションで何度もすれ違う相川克哉の存在に気づかないでいた。
『あたしって言われてもわかりません。出勤したいんで…』
相川克哉の顔もまともに見ようとせずに廊下に視線を移し駆け出した。
ガッ…右腕を捕まれた。
『この間から呼びかけても上の空、気分でも悪いのかと訪ねてみれば開けてはくれないし。
今朝は今朝で視線も顔も合わせようとしない。
シカト?』
『離して下さい!遅刻します!』
『これを受け取ったら離してあげる』
これ?
キャミソールを嬉しそうに握ってたくらいだからエロい雑誌?
あたしは力いっぱい腕を引き抜こうとする様子に悪魔の克哉は手を離した。
そのはずみで後ろへ2~3歩よろけてく。『危ないっ』
また腕を掴まれ舞は悪魔を見た。
うなじで束ねた長い髪、黒と白のセーターにジーンズに靴下に靴。
どう見ても出勤する服装ではない。
『仕事休みなの?』
『基本的に年中無休だけど、終わったら休みなんで。気になるの?』
『まさか!っていうかいつものバスに乗れないじゃないっ。今からバス停に走っても間に合わない』
『どこの会社?送ってあげる』
『車なんか持ってないんでしょ、イブの日バスに乗ってたじゃない』
『あの日には先輩に貸してただけ、間に合わないんでしょ』
それもそうだとあたしは渋々悪魔の後に続き、車に乗る事になる。
走り出す前に膝の上に置かれた弁当に目をみはる。
『何?』
『弁当』
『男好きとか言いながら彼女居るんですね。
悪いですよ、彼女に~。
見ず知らずのあたしに弁当作ってもらっちゃいけないわ』
『あたしが作った』
『悪魔が?』
『悪魔?』
『相川さんが作ったの?』『栄養片寄るし余計なところに贅肉ついちゃうから。そうするとバストが引き立たない』
『いらない!返す!
やっぱり相川さんじゃなくて、あなたは悪魔よ』
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