第1章・女?男?

14/31
前へ
/31ページ
次へ
『悪魔?弁当ばっかの隣人に親切に朝から作ってやったのに悪魔? 初対面のイブにパスタ作ってやったのに悪魔? 今こうして送ってやろうとしてるのに悪魔なんだ?』『降ります、頼んだわけじゃありません』 あたしはシートベルトを外すと悪魔は舌打ちし、左手を伸ばしシートベルトをする。 『間に合わないんでしょ!どこ?会社名に住所!』 携帯を見ると8:30、渋滞も考えると今送ってもらわないと間に合わない。 住所と会社名を告げると悪魔は少しずつ加速させ、知らない道を進んでく。 バス路線の国道ではない事に不安になり聞いてみた。『近くなったら主要道路に入るから良いのよ。 カーナビって近い距離ルートを出すから駅前周辺までの近道覚えてるわけ』 『あ…そういう事…』 『これなら間に合う?』『ありがとうございます』『引っ越して初めての出勤なんでしょ、昨日廊下で言ってたし。 【いつものバスに遅れちゃう】ってわからないわ』 『引っ越しした日に書類を取りに、何回か会社までバスに乗ってるから。 計算して8時18分と25分のどちらかに乗れば良いって…いつも使ってるような感覚が出ちゃったの』 『間に合わなかったら今みたいに送ってあげる』 『けっこうです』 『7つも年下のくせに甘えたらどうなの? 相川さんお願い、とか可愛く言っちゃうと弱いかも』『バスがあります』 悪魔は“仕方ねぇな”っていうようなため息をついた。 近道のおかげでどうやら間に合ったようだ。 会社の前でなく周辺でおろしてもらうつもりでいた。 『男の車で出勤って噂になるのが怖いから?』 悪魔はまたフッと笑って会社周辺で車を停めた。 『忘れてる、愛情弁当』 『あ、愛情弁当ぉ?』 『良いから行きなさい』 走っていく後ろ姿を見られているとは知らずに。 『舞、今日は弁当持参なんだ?早起きして?』 『あっこれはお母さんが』…**…**…**… 『嘘つき』 窓を開けて見ていた悪魔は意地悪く笑ってそう呟いた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加