第1章・女?男?

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帰りのバスはひとつ前の中野西で降りてレンタル屋を探した。 バス停から3分歩くだけなのだが、初めて行く場所なんで少しだけ迷っていた。『スーパーの裏なんてわかんないし』 コミック・CD・DVDのレンタル屋中野西店は駐車場も駐輪場も広く、8時とはいえ利用客も多かった。 DVD気になってたシリーズものあるかな? 話しながらよそ見して歩く中学生が舞に気づかずに通り過ぎ、男子の持つかごと体が舞に当たり棚にトンッと手を付き体を支えた。 が、手を付いたはずみで、ガシャガシャと棚からDVDが落ちていく。 ぶつかった男子が振り返りあざ笑う。 『ダセェ女』と。 『ちょっと謝りな…ー』 言葉は音に気づいた店員2人が走って近づいてくる事で黙るしかなかった。 1人はステキスーツ男子くん! だけど落ちたDVD割れてやしない?恐る恐る1枚を手にする。 『お客様、お怪我はないですか?ーーあっ。いつかの、来てくれたんですね!』『あの時はありがとうございました。 バス停1つ前の場所だから来ちゃいました』 うそうそ… あなたの顔が見たくて! 名札が付いていて河田さんという名前を心の中で繰り返す。 『バス停?もうすぐ終わるから送って行きましょうか?もう外は暗いですよ』 『あっ…』 初対面で遠慮しなきゃという気持ち・ステキスーツ男子くん…河田さんの笑顔を少しだけでも長く見ていたい。 舞はそんな葛藤で返事が出来なかった。 『出た!徹の営業スマイル!』 『茶化してんなよ』 DVDを一緒に拾い集め商品は割れていない事にホッとした。 中野公園前で降りた時には9時40分を過ぎた頃になり、遠慮するも河田徹はマンションまで舞を送って来ていた。 『ありがとうございました』 頭を下げるあたし、にこやかに笑う河田さん。 頭上で聞こえるハイトーンな笑い声にキュンッ。 『あのここまでで良いですから、上までは…』 マンションは5階まであるが河田はエレベーターの1~5の数字を見た。 数字は点滅し誰かが降りてくるらしかった。 河田が見えなくなるまで小さく手を振って、振り返ると凝視してくる悪魔がいた!
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