行列のできる店

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 行列がない。  さっきまであんなに並んでいた人の群れが忽然と消滅している。  振り向くと、並んでいる時は普通だった筈なのに、いかにも放置されている風情の建物が視界に入った。  店構えも看板もほったらかしの手入れ不足で、煤け、汚れ、蜘蛛の巣も幾つも張られている。  そんな店の入り口には、さっきは気づかなかった一枚の紙が貼られていた。けれどその文字はとうにかすれて読み取れず、俺は首を傾げたまま帰路についた。  そして、自宅で母から店の詳細を聞いた。  俺が地元を離れている間に、あの店の店長は交通事故で亡くなったのだという。その後、お弟子さんが店を存続させるという話も出たが、結局、店長の味を自分ではまだ再現できないと訴えて、店はそのまま戸閉になったそうだ。  だとしたら、俺が並んでいたあの行列は何だったのだろう。  俺が店を懐かしむ気持ちが何かに作用し、繁盛していた頃の幻を見せたのか。あるいは、あの行列は全員が全員この世の者ではない人達で、あの店は人知れず、そいうった『何か』当ての営業店となっていたのか。  俺に答えを導き出すことはできないけれど、もう二度とあの店のラーメンを食べられないことは残念だと思う。 行列のできる店…完
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