6人が本棚に入れています
本棚に追加
行列のできる店
久し振りに地元へ帰った時、ふと思い出して、通ってた高校近くのラーメン店に足を向けた。
当時通い詰めていた店で、美味い・安い・早いの三拍子揃った優良店だ。
記憶を頼りに店に向かうと、そこには驚く程の行列ができていた。
そういえば進学直前くらいに、タウン誌か何かのラーメン店特集で取り上げられてた気がする。
あの頃も混雑してたけど、ここまで評判の店になってたのか。
なんだか誇らしいような寂しいような気分で列に並んだ。
すでに一時を過ぎているのに、俺が並んだ後からも行列は伸び、途切れる様子はまるでない。とはいえ、後ろがどれ程長蛇になろうと、それは俺の知ったことじゃない。気にするべきは前の面々の減り方だ。
そこそこの速度で客が店内に入って行く。もう少しで俺も店の中に入れそうだ。
後十人。五人。三人、二人、一人…。
ようやく入店した店内で、俺は茫然と立ち尽くした。
そこには人っ子一人いなかった。
客も従業員もいない。机とテーブルはあるがそこに着いている者はなく、見ればうっすらと埃が積もっている。
カウンターから覗ける厨房も同様で、店長もお弟子さんもいないし、そこもやはり埃だらけだ。
何が何だか判らず俺は店の外へと飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!