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「怖いの?」
あの子が暗闇でうずくまるぼくに問いかけてくる。
ぼくは膝を抱えて震えて、涙を流しながらうなずいた。
「なら、壊せばいいわ」
あの子はそんなふうに笑ってぼくに囁きかける。
――どうして?
「だって、あれが怒るから怖いんでしょう? だから、壊せばいいの。そうすればもう、怖くないでしょ」
扉が開き、光がぼくを照らすと、ぼくの前に影ができた。
影が揺らめき口を開く。
「怖がるな! 『怖がれ!』 暴れるな! 『暴れろ!』 逃げるな! 『逃げろ!』 壊すな! 『壊せ!』 殺すな! 『殺せ!』」
何かを言っている。怒っている。
でもわからない。
「だから、壊せばいいのよ」
そうだ。
壊せばいいんだ。
きっともうあれは壊れかけているんだ。だからぼくがちゃんと壊してあげなきゃ。
「壊せ」
「『壊せ』」
――壊せ
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