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溜息をつき、イヤホンを耳から引きちぎった。
大音量の音楽が遠ざかり、俺の耳に静寂が訪れる。
何気なく、眩しい外を見た。
セミの声だけがうっすらと聞こえる。
声を聞いただけでも暑苦しく感じるのは、夏だからだろう。
外に向けた視線をパソコンに戻そうとした瞬間だった。
目の端に茶色い物体が俺の家のベランダに落ちてくるのが見えた。
反射的にその方向を見ると、それはどうやら鳥の翼のようだった。
いや、正しく言うと翼しか見えない。
胴体も頭も何も見えない。
かといって千切れた翼じゃない。
その前に大きさが尋常じゃない。馬鹿でかい。
これサイズ的に絶対鳥じゃないだろ。
放置するのも気味が悪いので、仕方なく重たい腰を上げて近づく。
エアコンから漏れる空気の音が部屋の中の唯一の音だ。
セミの声が近づく。
ガラス一枚を隔てて、その翼と対峙した。
その翼は日光を浴びて、鏡のようにキラキラと反射させた。
艶やかな茶褐色の翼は滑らかな触り心地を予想させる、、、
今日は35度を超える猛暑日だとか。
ニュースでやっていた気がする。
外とは対照的な、冷え切った窓を開け放った。
熱風がぶわっと俺の身体に突き当たる。
むせ返りそうだ。
翼が動く気配は、、、なし。
もしかして
死んでいる?
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