いつから

3/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
溜息をつき、イヤホンを耳から引きちぎった。 大音量の音楽が遠ざかり、俺の耳に静寂が訪れる。 何気なく、眩しい外を見た。 セミの声だけがうっすらと聞こえる。 声を聞いただけでも暑苦しく感じるのは、夏だからだろう。 外に向けた視線をパソコンに戻そうとした瞬間だった。 目の端に茶色い物体が俺の家のベランダに落ちてくるのが見えた。 反射的にその方向を見ると、それはどうやら鳥の翼のようだった。 いや、正しく言うと翼しか見えない。 胴体も頭も何も見えない。 かといって千切れた翼じゃない。 その前に大きさが尋常じゃない。馬鹿でかい。 これサイズ的に絶対鳥じゃないだろ。 放置するのも気味が悪いので、仕方なく重たい腰を上げて近づく。 エアコンから漏れる空気の音が部屋の中の唯一の音だ。 セミの声が近づく。 ガラス一枚を隔てて、その翼と対峙した。 その翼は日光を浴びて、鏡のようにキラキラと反射させた。 艶やかな茶褐色の翼は滑らかな触り心地を予想させる、、、 今日は35度を超える猛暑日だとか。 ニュースでやっていた気がする。 外とは対照的な、冷え切った窓を開け放った。 熱風がぶわっと俺の身体に突き当たる。 むせ返りそうだ。 翼が動く気配は、、、なし。 もしかして 死んでいる?
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!