いつから

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そう思ってその翼に手を触れようとした。 翼の間から何かがぬっと顔を出して、俺の手を掴み、 そのまま引きずり込もうと… まではしていないが、かなり強い力で腕を掴まれた。 人間?いや…でも鳥じゃないのか? 驚いて声も上げられず固まってしまった。 よく見るとそれは腕だった。 人間の腕がこのでかい翼から伸びている。 翼が突然ぷるぷると震えた。 「よかった…」 「ひっ…」 「ここにしばらく住まわせてくれ…頼む、、、」 声は翼が発していた。 俺の腕を掴んでいる力が次第に弱まっていく。 ストンと呆気なく腕が地に落ちた。 その手は動かない。 「え…死んじゃった」 「死んでおらん…この早とちりが…」 その声はぜぇぜぇと息を吐いていた。 よく見るとその腕は薄汚れ、いたるところに血が滲んでいた。 切り傷が多いが、何かを突き刺したような傷もある。 痛々しいのは事実である。 「早く…入れてくれ…じゃないと、追手が…」 「あ、、、はい…」 意識せず敬語になるほど、重みが混じった低い声に気圧された。 追手ってどういうことだ? もしかして、犯罪者? …おかしな格好してる時点で犯罪者になりあがったとか? そんな疑問を胸に残したまま、俺は翼を運ぼうとした。 「窓開けろって言ってんだ…運べとは言ってないだろ。。。」 すげー命令口調… 渋々と窓を開けると、翼はその形を崩さず、さわさわーと部屋に入っていった。
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