3/7
前へ
/11ページ
次へ
コップの水を持ってくると、傷だらけの手が俺の前に差し出された。 からかい半分にその上に自分の手を置く。 思いっきり引っ張られた。 突然のことにバランスを崩す。 体がソファに沈み、水の入ったコップが宙を舞う。 顔を上げると、緑色の光が目に入った。 らんらんと光る翼の瞳だった。 「ふざけるのは構わないが、私を巻き込むな。。。 よかったな、あと一歩私に近かったら喉を噛み千切られていたぞ」 くくく…と喉の奥で笑う声が聞こえる。 翼は愉しむように目を細めた。 俺は金縛りのように体が動かなかった。 瞳は優しい緑色をしているのに、翼自体が邪悪な生き物に見えた。 イメージが意識なしに浮かんだ。 闇に巣喰う生き物。 まるでそれが聞こえたようにふっと緑色が寂しそうに褪せ、 ぷいっとそっぽを向いた。 その目はじっとコップを見ていた。 翼はコップを傷だらけの手でつかむと、キッチンの方に移動していった。 ソファに沈んだままの俺は呆然と天井を見ていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加