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コップの水を持ってくると、傷だらけの手が俺の前に差し出された。
からかい半分にその上に自分の手を置く。
思いっきり引っ張られた。
突然のことにバランスを崩す。
体がソファに沈み、水の入ったコップが宙を舞う。
顔を上げると、緑色の光が目に入った。
らんらんと光る翼の瞳だった。
「ふざけるのは構わないが、私を巻き込むな。。。
よかったな、あと一歩私に近かったら喉を噛み千切られていたぞ」
くくく…と喉の奥で笑う声が聞こえる。
翼は愉しむように目を細めた。
俺は金縛りのように体が動かなかった。
瞳は優しい緑色をしているのに、翼自体が邪悪な生き物に見えた。
イメージが意識なしに浮かんだ。
闇に巣喰う生き物。
まるでそれが聞こえたようにふっと緑色が寂しそうに褪せ、
ぷいっとそっぽを向いた。
その目はじっとコップを見ていた。
翼はコップを傷だらけの手でつかむと、キッチンの方に移動していった。
ソファに沈んだままの俺は呆然と天井を見ていた。
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