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「なんで民家の庭にカラスがいるんだ、早く片付けっ…」
目を見開いてキッチンの方を指さしている。
漆黒の長髪が揺れる。
緑色の瞳。
間違いない。今さっき蛇口を使っていた翼の持ち主だ。
翼の持ち主は言葉をそこまで言いかけて、唐突に顔を伏せた。
そういえば、なんだろうこの軽さは。
身体の重ささえ感じない。
分厚い辞典が平らにされて体の上に置かれているような。
明らかに人じゃない。
「勝手に家に入って悪かった…」
声のトーンに申し訳なさそうな色が浮かぶ。
何だ急に、変な奴。
「そう思うならいちいちこっちに伝えてくるな」
「えっ」
俺、声に出してないはずなんだけど。
「私はただの翼を生やした人間じゃない。
元はフクロウだったが、生贄の代わりに読心術を手に入れただけだ」
い…生贄、、、
「騒いだことは謝るから…今私を放りだしたりしないでくれ…」
「放り出す気なんて…そんなの」
騒いだだけで放り出すだって?
確かに急に空から降ってきたけど、いくらなんでもそんな手荒な真似はしない。
「あぁ、、、思いだした。
人は嘘をつくんだったな…
信用はしないが、保障としてその言葉受け取っておこう」
ずるずると身体を引きずるように降りた翼の持ち主は、机の下にもぐった。
翼の持ち主は黙ってしまった。
また翼で自分を覆っている。
近づいてやっと、寝ているのだと気づいた。
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