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 私は空を見上げてみた。昨日と同じ雲一つない晴天のソラ。まるでキャンパスの絵の具を落としたかのようなその世界を、右手で一回、強く薙いだ。  するとたちまち、強い風が吹き荒れて天候が怪しくなる。 曇天の雲が立ち込め始めたところで、「ストップ」といった。曇天の雲に太陽の光は遮られて、気温が下がっていくのが肌で感じられる。 「うん、ちょうどいい」  そうまた呟くと、歩き出す。数歩進んで「あ、そうだ」と思いつき、今度は指をくるくると、空中で回した。        ※ ――まずいぞ!  淳の声が響く。その声で目を覚ました哲也は、ぼんやりしながら外の景色を見た。  そこはまるで、嵐の真っただ中。雨が、風が吹き荒れている。バスは右に左に大きく揺れ、まるで船に乗っているかのような感覚を哲也は受けた。
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