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 木漏れ日が頬をなでる。小鳥のさえずりが響き、空が笑っている。 雲一つない晴天なこの状態で、何も考えずに呆けている自分はどうかと思う一面、たまの休日こうして外界から切り離された行為をすることも、また一考だ。  私の頭上を、つがい、だろうか。二羽の青い鳥が飛んでいく。 仲睦まじいと思いながらも、私の景色を汚すという行為はいただけない。私は、右手で空を軽く薙いだ。 すると、〝思い描いたように〟空間が歪み、彼女の瞬きが一回終了するころにはそこには先ほどと同じ無垢な晴天が広がった。        ※ ――おい! しっかりしろ!  いちいち恐怖を掻き立てる男の怒号が響く。  灼熱の太陽の下、場所は野球場のグラウンド。  夏の高校野球。場面は九回の裏、二アウト満塁。 点差は三対二と、一打出ればサヨナラとなってしまう試合で、古市哲也(ふるいちてつや)は、キャッチャーのサインに頷き、ミットにめがけてボールを力いっぱい投げ込んだ。
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