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 真夏の太陽が照りつける中、哲也と淳はキャッチボールをしていた。 「そんなこと考えてる暇あったら、もう少し配球とかを考えろよ」 「わかってるよ」  天気予報で、今日は気温四〇度を超すと発表されていた。屋外での運動は避けるべきだとキャスターも言っていた。しかし、そんな暑さでは中止にならないのが部活であり、高校野球だ。 「試合、何時からだっけ?」 「一〇時からだよ、覚えとけアホ!」  そう答え、哲也はグラウンドにある時計を見た。八時半を回ったところだ。  相手は甲子園出場経験のある名門校。正直言ってしまえば、勝てる気がしない。けれど、監督の期待に応えるためにも、皆のためにも――。  決意を胸にして、哲也はボールを握りしめた。 「おい!」  監督の怒号がベンチから響く。わかってるよ、と言いたくなる気持ちを抑えて、哲也はボールをミットめがけて投げ込んだ。  快音が響く。また、ヒットだ。
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