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ギュッと美百合の体を抱きしめて言った。
「前に欲しがっていた、南洋真珠の指輪を買ってやるから」
美百合は唇を尖らせながらも、
「なんで? ゆーえすえー・じー・おんの方がずっと安いのに」
納得できないと呟いているが、その抵抗は最初の頃よりはずっと弱い。
さしもの美百合も『指輪』の魅力には逆らえないのかと、俺の思惑通りの展開に少し安心しかけると、
美百合は俺の腕の中で元気におねだりした。
「うん! でももう指輪はいいんだ。今は龍一とおそろいの腹巻が欲しい」
「!? 腹巻?」
「だって龍一ってば、実はお腹が寒いと不安で眠れない人でしょ。だからふたりおそろいの腹巻を買って欲しいの!
ペアルックを嫌がる龍一だって、お家の中限定の腹巻なら一緒につけてくれるでしょう」
「……」
俺は、美百合の思考が、いつだって読めない大バカ者だ。
そして、どうやったって、美百合にはかなわない俺自身を、どうやらそれなりに気に入っているらしい。
俺が頷いて了承してやると、
「龍一、大好き!」
美百合は言って、俺の首に強くしがみついてきた。
ああ、本当に――。
大バカ者も悪くはない。
有坂 龍一 談
【終】
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