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龍一の独り言
「龍一のバカァー!」
美百合は今日も元気に叫ぶと、パタンとふたりの寝室のドアを閉めて、中に閉じこもってしまった。
「……困ったな」
さして困りもしないが、ここは空気を読んで、俺は小さくそう呟いてみせる。
どうせドアの向こうでは、美百合が耳をそばだてて、俺の様子を窺っているに違いないのだ。
三日に一度は、美百合は俺のことを、
「龍一のバカァ!」
と怒鳴る。
こうたびたびバカ呼ばわりされると、本当に自分はバカなのではないかと思えてくるから、人間というのは不思議な生き物だ。
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