見つけたら最後

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病院につくなり、すぐに面会の手続きを済まし、彼女の病室へ向かう。 親族以外は面会謝絶となっていたが、彼女の母が根回ししてくれたおかげで、すんなり入る事が出来た。 僕は、彼女がいる病室のドアを軽くノックし、そっと開けた。 室内は灯りが全く着いておらず、物音一つもない。 そんな静寂な暗闇を進んでいくと、うっすらと人の姿が見えた。 それは数ヶ月前とは変わり果てた彼女の姿だった。 髪はボサボサで乱れており、頬も少しこけていた。 そして僕が1番好きだった優しい眼差しを向けていたその瞳は、鋭い眼球でどこか一点を見つめていた。 「………」 僕は無言のまましばらくそこに立ちつくしていた。 というより、彼女のあまりにも変わり果てた姿に言葉を発する事も出来ず、その場を動く事さえ出来なかった。 彼女もただ一点を見つめるだけ。 長い沈黙が続いた。 今ここにいる人物が本当に彼女なのだろうか。 そんな考えすら脳裏を掠める。 僕か何とか言葉を振り絞ろうとしてると、彼女の方から声が聞こえてきた。 「………見つけてしまったのね。」 「貴方は優しい人だから… だから他の誰かと幸せに生きて欲しかった… でも 見つけたら最期。 あなたも 私も」 そう言われた次の瞬間から、僕の目の前はまるで底なし沼に引き込まれるようにして、暗闇に覆われていった。 薄れゆく意識の中で僕は思った。 ああ これで僕は いや僕等は やっと幸せになれる
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