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彼女の母とは何度かあった事もありお互い知らない間柄ではなかった。 ただ今となっては、彼女と別れているのにこの場にいる事の気まずさがあったので、早くこの場を立ち去りたいと思い 「すみません。」 と一言告げてこの場を離れようと回れ右をした。 「ちょっと待って!」 彼女の母に呼び止められる。 「話したい事があるの…。」 そう言って家に入るように促す。 僕は何がなんだか分からないが、このまま帰る訳にもいかないので、意を決して家へと入って行った。 彼女の家の中は、相変わらず温かみのある雰囲気に包まれていた。 彼女がいるか気がかりだったが、彼女の姿はそこにはなかった。 僕は彼女がいない事が分かり、残念な気持ちと、少しホッとした気持ちが入り乱れていた。 そんな事を考えていると、彼女の母はゆっくり話はじめた。 「あなたと別れたって話は聞いていたわ。突然の事で驚いたでしょう。」 「でも… どうかあの子をあの子のことを責めないで欲しい。 …あの子は何も悪くないの……」 僕は無言のままただ話を聞いていた。 「あの子には絶対に黙っておけって言われたけど。それじゃあ…あの子があまりにも可哀想だから言うわ…」 彼女の母は目に涙を浮かべながら… 「………あの子はもう長くないの。」
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