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「私、チェス苦手なのよねえ」
と言って、イズミは駒をボードに並べ始めた。
俺の選んだ駒は、黒。
先行は、白のイズミだ。
強引にイズミと試合をすることになったが、勝負好きな俺は内心ワクワクしていた。一人で駒を並べて戦略を立てても、つまらない。
チェスは、自分の性格がそのまま投影されるゲームだと思う。
「相変わらず守りが堅いのね、千葉」
「ゲーム中に口を聞くなんて…ほら、チェック」
今まで堅く守っていたが、クイーンを大きく動かし、白キングの動きに狙いを定める。
「イズミは、威勢のいい攻め方をするけど、隙が出来やすい。特に、ナナメの動きに意識がいっていない」
「性格悪いわよねえ…懐にナイフを隠し持っていて、相手が迷い込んだ瞬間に躊躇なく刺し殺すわよね、千葉なら。守りが一見堅いように見えるけど、裏には激しい情熱を隠し持ってるみたいな」
「害があるなら迷いなく刺すかもね…」
物騒な喩えに苦笑いを浮かべながら、キングを追い込む。
「あら、あら。もうダメね」
「チェックメイト」
カチン、とルークを差し、試合は終了した。
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