5人が本棚に入れています
本棚に追加
###
千葉藤生(ちばふじお)は人生最大かもしれない、窮地に立たされていた。
ここは過去に学園の先輩たちが残して行った輝かしい歴史が詰まっている場所、トロフィー室。
華やかにきらめくトロフィーに囲まれながら、藤生はとある女子生徒にじりじりと迫られて、壁際に追い込まれていた。
この狭い空間だと、逃げ道がない。
額に脂汗を滲ませながら、藤生は眼前に迫り来る女子生徒にむかって言葉を絞り出そうとしたが…
「千葉。アンタなら私の言いたいこと、もう分かってるわよね?」
ダンッと耳の近くで壁を叩きつけるような音がしたかと思えば、その女…津吉イズミは両手を俺の顔の横につけてグイッと顔を近づけてきた。
イズミは背が高いので、俺とほぼ同じ目線だ。
奴の視線が俺を射抜く。目を逸らすことも許されないような緊張感漂う空気。
俺の逃げ道は彼女によって完全に塞がれた。
キングがクイーンにチェックされ、逆転の兆しが見えないような、そんな状況だった。
「お、俺はただ……お互いの技術を高め合えるような、そんな健全な仲に…」
「それ、潔癖っていうのよぉ?技術の他に、高め合えるものがあるじゃない。付き合っているなら…ね?」
そう耳元で囁きながら、イズミの右手が俺の胸に当てられ、スルスルと身体のラインをなぞりながら下に降りて行く。
最初のコメントを投稿しよう!