序章

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紅葉さんは、中川先生という美術教師のことが好きらしい。 紅葉さんが図書館で居眠りをしてしまった時に、警備員に気づかれずに鍵をかけられて閉じ込められてしまったことがあるらしい。 暗い中泣きそうになりながら途方に暮れていたところを、偶然中川先生がコッソリ本を借りに鍵を開けて入ってきて、その際に助けてもらいその日から中川先生を慕うストーk…ではなく、追っかけになったらしい。 ところで何故この学園に美術という科目があるんだ、と疑問に思う人もいるかと思うが俺は大事な科目だと思っている。 例えば、賭け事で美術品を賭けたとする。 俺たちは相手の持つ美術品が本物か偽物か見極める必要があるのだ。これも大切な能力のため、徒蘭譜学園では授業にも力を入れている。 「なっかがわ先生ーー!」 紅葉さんは俺を掴んでいた腕をパッと離し、中川先生の背中に向かってダイブした。 「も、ももも紅葉さん?!」 中川先生の弱々しい声が聞こえる。 俺は腕を離された反動で勢いよく後ろ向きに身体が傾いた。
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