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茨姫の見た夢
ピピピッ ピピピッ ピピピッ
規則正しい音でふんわりと浮上する意識の中、枕元にある目覚まし時計を手探りで探す。
ピッ…
途端に静かになる部屋。ただ気だるい空気が部屋に重く漂う。今日もまた同じ一日が始まる。寝起きの億劫な気持ちのまま、腕だけで上半身を持ち上げた。垂れた頭から髪の毛がさらりと重力に従い、枕に落ちる。
「……あぁ、」
頬に違和感を感じ、そっと触れた。つるっと滑るような、指先が濡れた感覚に私はやるせない気持ちになる。カーテンの隙間から零れる採光に濡れた指先が私の気持ちとは裏腹に光っていた。
「またこれか。」
吐き出したい気は重たいものだった。
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