Save the Cat!

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 わたしは網谷彩菜。  大学を卒業してS&Sカンパニーという会社に就職して、今は新入社員の研修中。  研修も半ばを過ぎて、仲の良い友達もできた。  楽しい毎日を過ごしているけれど、ちょっとだけ寂しい気分もあります。  あーあ、いつもこうなんだよなあ。  わたしが好きになった人、八尋速人君にはもう相手がいる。  今はまだ付き合ってないけれど、それは時間の問題だけ。  しかも相手の女性はわたしも仲良くしている友達で上本茜さん。  彼女はとびっきり素敵なんです。  自分の好きな男性の好きな女性。  普通だったら気に入らない存在なんだけど、彼女に対してはそうは思えない。  茜さんはわたしより少しだけ年上だけど、その年の差以上に女としての差を感じる。  彼女は彼に対しての愛情を少しも隠さない。  その表し方がとても自然でわたしにはとても真似できない。  茜さんは美人だし、とっても優しい。  茜さんは一人でいることが多いんです。  でも友達が少ないとかではない。むしろ人気者です。  呼べばいつでも誘いに応じてくれます。  こういう研修所みたいなところに来ると、女性にしろ男性にしろ誰かと一緒にいることが多くなりますよね。彼女はそんなことがないんです。群れないというか。  誰にでも分け隔て無く接して、いつも自然なんです。  一人でいても寂しそうに見えない。そんなところも憧れてしまうんです。  彼女と一緒にいてわたしは嫌な思いをしたことがありません。  だからわたしは茜さんのことも大好きです。  憧れのお姉さん。  はぁ、どうせなら嫌な人だったら楽だったのに。  でも、そうだったらそうで腹が立つのかな。  何にしろわたしの入り込む余地はありません。
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