球技大会

2/13
前へ
/71ページ
次へ
 その日、S&Sカンパニー国分寺研修所は歓声と笑い声に溢れていた。  研修授業の間にあるレクリエーション。研修生による球技大会が行われるのだ。  開催にあたり若山所長の挨拶があった。 「どんな場においても仲間と協力するということは大切なことです。みなさん、今日は存分にスポーツを楽しんでください。仲間と一緒に勝利を勝ち取ってください」  チーム対抗で行われるこの大会は各種の競技ごとにトーナメント制で行われる。ソフトボール、サッカー、バレーボール、卓球、そして何故かドッジボール。  最後に選抜された選手で野球の試合がある。  ご褒美としてビール券が配られる。  順位ごとに配られるビール券の枚数が変わる。ビールの交換所があり、そこで券とビールを交換できる。競技が終わった後、大量のビールを手に入れていればビールかけができるのだ。もちろん普通のソフトドリンクも用意されている。  男女の区別なしで行われるので、女性が多いクラスは不利になる。そのため、いくつかのクラスでシャッフルが行われた。 「これは楽しくなりそうですねえ」  仁科聡が周りを見渡しながら言った。 「さあ、どうだろうね」  八尋速人はそう言いながらも、心は弾んでいた。  ここ最近は机に座り講義を聞いたり、テストを受けたりでうんざりしていた。  元来、体を動かすことが好きな速人はこのイベントは願ったり叶ったりだった。 「今日はライバルだな」  そう言って速人らに近付いてきたのは福永達也だ。その後ろで仁王のように立っているのは田上雅夫、通称ニコ。 「じゃじゃーん。あたしも敵チームでーす」  ニコの大きな体の後ろから飛び出てきたのは上本茜。  薄い赤茶色の毛が揺れている。Tシャツ姿なので、飛び出てきた反動で同時に大きな胸も揺れていた。  今のところ、速人にとっては友達以上恋人未満。  周囲の人間が速人に言うことは〝ぐずぐずしてんじゃねえ〟だった。  茜と達也、ニコは同じチームになったようだった。  速人は仁科、そして元々同じクラスの三上涼子、網谷彩菜、竹下久美子、西川由紀が同じチームだ。  もう一人、川井良太という仲間がいるが、彼は運悪く他のチームになってしまった。  この十人は研修中に仲良くなりグループを形成している。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加