旧知の友

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「勘弁してくださいよ。飲んだ席でちょっと喧嘩しただけじゃないですか。そいつも反省してますんで、五万、いや十万出すんでそれでなかったことにしてもらえませんか?」 「十万だあ? お前なあ、横からゴジャゴジャとうるさいぞ。いいから黙っとけ。俺らはびた一文まける気はないからな。俺は腕を骨折してるんだ。仕事も一、二ヶ月は出来ないだろう。その分も考えたら二百万は妥当なんだよ」 「へえ、そうなんですか。一、二ヶ月で二百万稼ぐって凄い高給取りなんですね。そんな風には見えないですけどねえ」  茶番に飽きた速人が少し挑発する。  男はその言葉の意味がすぐに理解できなかったらしい。いきなりそんなことを言われるとも思っていなかったのだろう。 「何っ! このガキ。馬鹿にしやがって」  そう言うと、怪我していない方の腕で速人の顔を殴った。  避ける必要も無いと思い速人はそれをそのまま受けた。頬と唇に軽く痛みが走る。  くそっ、やっぱり避ければよかった。  舌で血の味を感じながら速人は思った。  そこでそれまで黙って立っていたニコがスッと速人と男の間に入る。  長身のニコは男の顔を無表情な顔で見下ろしていた。 「何だ? このでかぶつ。やる気か?」  男は怪我した腕で顔を隠そうとしながら、少し怯えた様子で言った。  ニコはそれにはまったく反応せずに、速人の方を振り返る。 「こいつら、やっちまっていいか?」  そう言うと、男の胸ぐらを掴み片手で持ち上げた。 「とりあえず、やめておけよ」  速人はそう言ったが、掴んだ手を離せとは言わなかった。  男はジタバタと暴れたが、そのうちに肩から吊っていた包帯がほどけた。男は包帯を巻いている腕も使ってニコに手を離させようと両手をバタバタさせる。  ニコはそれを見ると男を放り投げた。 「あらま。今、怪我してる腕を使おうとしてましたよね? おかしいなあ。骨折してるんでしょ? 普通はかばうんじゃないかなあ?」  速人はニヤニヤしながら、座り込んだ男に向かって話しかけた。  俊介は口を開けてその様子を見ていた。
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