旧知の友

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「てめえ、俺らにこんなことしてどうなるかわかってるんだろうなあ?」  もう一人の男がニコに放り投げられた男の元に駆け寄りながら言った。 「それは知らないけど、腕の怪我が嘘だってのはわかりましたよ」 「このガキ! 殺してやる!」  そう言って速人に襲いかかろうとしたが、またもニコが速人の前に立つ。  軽く顎を掴むと、再び片手で持ち上げる。  チラリと速人の方を見るニコ。  速人は笑って頷いた。  ニコは男を地面に投げ捨てる。 「八尋、やばいって。俺、免許とか取られちゃってるからさ」  俊介が速人の耳元で囁いた。 「そうだったな。返してもらわないと」  速人は地面に倒れている二人に近寄り、そこで座り込んだ。 「というわけで、こいつから取ったものを返してもらえませんか?」  その二人は憤怒の表情だが、ニコの怪力を見せられた後なので大人しく黙っている。 「しょうがないなあ。ニコ、お二人さんにはもう少し空を飛んでもらおう」  速人は満面の笑みを浮かべ言った。  ニコが一歩、前にでる。 「ちょっと待て、今は持ってねえ」 「ニコ、今度はもう少し長距離で頼むわ」 「本当なんだ。事務所に保管してある」  速人は立ち上がり、少し考える。  こいつは困った。取りに行かせるか? いや帰ってくるわけがない。  俊介の身分証明書が何に使われるかわかったもんではなかった。  となれば選択肢は一つしかなかった。  行くしかないか。  出来れば一生、近寄りたくない場所だが仕方がなかった。 「取りに行くしかないな」  ニコに向かって言うと、俊介は目を丸くした。 「お前、何言ってんだよ。そんな怖えとこ絶対に行きたくないぞ」  俊介が抗議の声を上げるが、ニコは何事もないように頷き了解の意を示す。 「このままだとお前、大変なことになるぞ。いつのまにか借金まみれとかさ」 「ああーっ、どうしてこんなことに。俺のバカ、大バカ」  俊介が天を仰いでいる。 「さあ、お二人さん。案内してもらいましょうか」
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