旧知の友

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 繁華街から少し離れた場所にその建物はあった。 「大賀明日組」と書かれた看板が目を引く。二階建ての何の変哲もない小さな建物だが、どこか他の建物とは違う雰囲気を醸し出していた。  入る前に速人は念のため、親友の福永達也にラインのメッセージを入れておくことにした。置かれている状況、これからすることを簡単にまとめて送信する。  一人くらい話がわかる人がいればいいなあ。  速人はそんな楽観的な考えを持っていた。  ニコが一緒にいることも大きい。最終的にはどうにかなるだろうと思っている。 「さて、大丈夫なんでしょうかねえ」  速人はまるで緊張感の無い声で言った。  俊介に頼まれた時はとても嫌な気がした。  公園に立つ二人を見た時も関わったことを後悔した。  しかし事態がこうなった以上、速人はすでに恐怖や後悔を感じていない。  俊介の物を取り返し、無事にここから抜け出す。そのこと以外は考えても無駄だとわかっていた。  案内した内の一人、怪我をしていない方が建物の入り口にあるインターフォンを押す。 「関川です。ちょっと問題がありまして。はい、石橋も一緒です」  少しのやり取りの後、ピーっと音が鳴りドアが解錠される音が聞こえた。  二人が先に入り、速人らはその後に続く。  ドアの先は階段でとても狭かった。大人が一人歩くのが精一杯の横幅しかない。  ニコなどは少し斜めにならないと歩けないくらいだ。  なるほど。一気に攻め込まれない工夫か。  速人は狭い階段を登りながら、場違いな感心をしていた。 「うちの若頭はな、こえーぞ。地獄から帰ってきた人だからな。覚悟しとけよ」  さっきまで大人しかった関川が急に元気を取り戻し、速人らを脅してくる。 「地獄だってさ、怖い怖い」  速人が軽口を叩くと、俊介が慌てて速人のTシャツを掴んだ。 「やめろって。きっと刑務所とかのことだぜ」  小さな声で囁く。ニコは口を歪めるだけで何も言わない。  その階段を登り、また扉がある。  先に行った二人が何か言うと扉は開いた。 「ちっと、ここで待ってろ」  中には数人の男が速人たち三人を睨み付けていた。ただ見ているだけかもしれないが、それでもその威圧感は尋常ではない。  奥から怒鳴り声が聞こえてきた。
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