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次はドッジボールだ。
速人らのチームからは久美子と仁科が出場した。
久美子は小柄で落ち着いた雰囲気の女性で運動神経は普通よりやや上といったところだ。
仁科は太めの体型だが意外に俊敏な動きをする。久美子は彼のお気に入りの女性なのでやる気満々である。
久美子にいいところを見せようと無駄な動きが多い仁科だが、額から汗を垂らし必死に頑張っている姿を見ると、速人は微笑ましくなってくる。
結局、ドッジボールは準優勝に終わった。
仁科が久美子とハイタッチしている。
「やばいなあ、わたし何にも出てないや。後はサッカーとソフトボールかあ。どっちも男の子多そうだよね。どうしよう……」
隣の彩菜が呟いた。何か一つでも出場しなければならないのが唯一のルールだった。
「ドッジボールに出ればよかったのに」
「そのつもりだったよ。でもさ、仁科君が出たいって言うからさ」
なるほど。速人は事情を理解した。
彩菜は気配りがよくできる娘だ。久美子と一緒に出たい仁科に譲ってあげたのだろう。
そのうちに定員になってしまったのだ。
人が良いってのは色々と大変なことだ。
速人はそんな彩菜を可愛く思い、何とか助けてやれないものかと思案した。
すぐに思い付く。
「ソフトボールに出なよ。俺も一緒に出るからさ」
「えー。ムリムリ。ボール取れないよ」
「そこは大丈夫、安心していいって」
それでも渋る彩菜に速人は思いきり笑いかける。
それで安心したのか、彩菜も目がなくなる笑顔でそれに応えた。
「よし! 網谷彩菜、ソフトボールで頑張ります!」
そう言って速人の前で両手を握り、ポーズを取る。
そんな姿もとても可愛い。速人は過去に知っていたある人物を思い出し、自然と笑顔が続いてしまう。
「その前に次のサッカー見てこようよ。まだ時間あるし」
「うん! サッカー大好きなんだ。もちろん観戦する方ね」
サッカー場に行くと、女性の大歓声が聞こえる。
この会社に入る前にJリーグに所属するあるチームの二軍にいたことのある男がいるようで、その男のプレーに対してのものだった。
対戦しているのは達也らのチーム。なんとゴールキーパーはニコだった。
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